謎を作れ!3話 科学の国の未来くん編~小物制作編~
※目隠しポスターまで前回と同じ文章が続きます。既にお読みの方は読み飛ばしてください。
こちらは、ゴールデンウィークに行った謎解きイベント「未来くんからの挑戦状」と10月~12月に行っている謎解きイベント「科学の国の未来くん」の担当者による小話的な記事となっています。
このページには特に謎は隠されていませんので、謎解きがしたい方は開催中の「科学の国の未来くん」または、科学館以外の謎解きイベントにご参加ください。
※現在開催中の「科学の国の未来くん」の答えのネタバレは行いません。ただ、モチーフなどの話はしますので、「完全に情報がない状態でイベントに参加したい」場合は読まないようにお願いいたします。
それでは、秋・冬の本番、現在開催中の科学の国の未来くん編です。
ゴールデンウィークのクリアの証未来くんからの手紙の裏面では、「科学の国の未来くん」は有料イベントとなる予定でした。
こちらは、ゴールデンウィークのお客様の反応などを鑑み、「休館前の広報及びこれまでのお客様への感謝として無料イベントにしよう」という館長の計らいで無料イベントとして行うことになりました。
ゴールデンウィークに行った「未来くんからの挑戦状」に比べて、秋冬に行っている「科学の国未来くん」では床・壁の装飾、加工モニター、魔法の眼鏡など制作した小物が多くあります。今回はそれらの制作秘話をご紹介しましょう。
まず、イベント参加者の方へ「青いうさぎの足跡をたどっていったエリアで最初の問題を解いてくださいね」と案内しております。この「青いうさぎの足跡」はカッティングシートと呼ばれるものを切って作成しています。
こちらのカッティングシート(株式会社中川ケミカル製)はシール状になっていて、ガラスや大理石などつるつるした面に貼ることができます。昔はこのシートを文字の形に切り取り企画展の看板を作っていたそうです。
科学館には青・赤・橙・黄・黄緑・紫・茶・深緑の8色があります。こちらをそれぞれの色に対応したシルエットに切り抜きます。青はうさぎの足跡に。赤・橙・黄は薔薇に。黄緑はシルクハットに。紫は猫の足跡に。茶色は女の子の足跡に。深緑は当初薔薇の生け垣を作ろうと思ったのですが…断念しました。
カッティングシートを切るためのシルエットデータを作成します。「猫 足跡 イラスト 描き方」と検索して、データを作っていきました。そしてカッティングマシンにデータを入力し、切っていきます。カッティングマシンはbrother製ScaNCut(CM650W)を使用しました。専用のサイトCanvasWorkspace(https://canvasworkspace.brother.com/)を使用するとillustratorのデータなどを変換して読み込ませることができます。シルエットのデータを作成し、専用の土台シートにカッティングシートを張り付けてスイッチON!
あとは、出来上がりを待つだけです。データの数や複雑さによって時間も変わります。ちなみに写真のシルクハットだと2分でできますが、クリスマス用のオーナメントのシルエットをぎっしり詰めたシートは30分かかりました。
さて、出来上がった猫の足跡がこちらです。チェシャ猫の紫色にしました。
猫に見えますよね?かわいい猫の足跡です。
「何の動物の足跡に見えますか?」と聞いたところ、職員を含め、大半の方から「犬」と言われたため、デザインを変更して現在の丸みを帯びた足跡になりました。
こちらは、皆様に猫と言っていただけます。前のネコなのですが…
小物としてはモニターと魔法の眼鏡も外すことはできません。
市販の液晶モニターは表面に偏光板を含んだ複数のフィルムが張られています。
(詳細はこちらのsharpさんのサイトなどをご覧ください。)
謎解きで使っているモニターはこの表面のフィルムを執筆者Kが人力で剥がしています。
カッターをフィルムの間に入れて削るようにすると、1㎝から数cmの幅でフィルムが剥けていきます。あとは画面全部のフィルムが無くなるまでこの作業を繰り返していきます。
今回のモニターはPCモニターを使用しました。とても古い型のものから比較的新しい型の物も使っています。剥がしていると剥けやすいフィルムと剥けにくいフィルムがあり、古い方が比較的向けやすいことが意外な発見でした。古い方がフィルムも厚かったので、「技術の進歩によってフィルムが薄くなって剥けにくくなったのかも?」とか考察しながら無心になって剥きます。
試作品含めて10枚近くモニターを分解、加工してた頃でしょうか。このころになると余裕ができてきて油断が生じます。普段は1cmくらいしかフィルムが剥がれないのに数cmフィルムが剥がれて調子に乗って「一気に作業が進みそう!」とか思った時なんかは特に。
右側3分の1が剥けて、真ん中の3分の1もあと2割くらいって頃に調子に乗った瞬間「ぱりんっ!」っと小気味よい音が聞こえました。フィルムに引っ張られて下の面にあるガラスが割れてしまいました。
油断、ダメ、絶対。
(※作業では中古のモニターを使用し、作業者も軍手を二重にするなど安全対策をしております。同じように加工をする場合は怪我に気を付けて、自己責任で行ってください。)
このモニターの犠牲を次に生かしつつ、11月5日からメインホールに設置されたお試しモニターの加工を行いました。
魔法の眼鏡には同じように偏光板を使っています。モニターに使用しているものと完全に一緒ではないので、少し色味が悪い場所もありますが、偏光板の原理は一緒なので、魔法の眼鏡で覗くとフィルム剥がす前のモニター(偏光板で挟んだ状態)と同じように見ることができます。
魔法の眼鏡の作成手順は以下の通りです。
①:レンズの縁の部分(万華鏡風)と持ち手の部分を印刷します。それぞれを円形カッターとカッターで切り取ります。
②:持ち手部分は中にアイスの棒と同じものを芯として入れます。
③:シート状の偏光板を円形カッターを使って丸く切ります。
④:②③を組み合わせてボンドで接着します。
というわけで、執筆者Kを含め、科学館職員や謎解きスタッフが一本ずつ制作しております。ですので、ぜひお家で帰って出来る実験もやってみてくださいね。
(※詳細は魔法の眼鏡と一緒に渡した「魔法の眼鏡の使い方」をご覧ください。)
最後に、今回使用している紙は一部を除いてレーザープリンターを使用して印刷しています。
これは、科学館の来館者の方の年齢層を考慮したものです。インクジェットプリンターの方が発色が良かったり、フチなし印刷ができたりと良いところもあるのですが、水でにじむという欠点があります。
レーザープリンターはフチなし印刷ができないですが、水に強く滲みにくいため来館者のお子さんが濡れた手で触ってしまって滲むということを避けられます。
どちらも一長一短なので、目的をもって今回はレーザープリンターを使用しました。副産物?として、問題用紙などが良い感じに少し硬くなり書きやすくなったので、とても良かったです。市販のコピー用紙と同じ紙を使っているのですが、手触りなどはいかがでしょうか。
それでは、秋冬の小物制作編はこれくらいにしておきましょう。
科学館で皆様のご来館をお待ちしております。 それでは、また。 さようなら。
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